銀行員として定年まで働き続けることのできる人はほんの一握りで、ほとんどの人は転職したり出向で銀行を離れていきます。
出向と聞くと定年前に肩をたたかれて関連会社や取引先へ経費削減のために行かされるなんて悪いイメージを思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、若手の時期に経験を積ませるために取引先へ出向させることもあります。ですので、出向にも良いものと悪いものがあるというわけです。
今回は出向後の給与事情や出向と転籍の違いについて紹介させていただきます。実際に銀行から出向した男性から出向後の待遇や仕事内容についてアンケートに協力してもらいましたので参考にしていただければと思います。
出向したら給料は銀行員の時よりも下がる?
まず、出向したら給料がどうなるかについて説明させていただきます。出向は銀行に籍を置いたまま他の会社に行き働くことですので給料は銀行員時代と変わらないのが一般的です。
出向後の仕事内容によって多少変化することがありますが、大幅に給料が減ってしまうなんてことはないでしょう。
ただ、出向後の給料をどちらの会社の水準に合わせるのかは2社間の取り決めによります。出向先の水準に合わせることになれば給与は基本的には下がります。
ですので、出向の場合でも給料が減少する可能性があります。毎月の給料は変わらなくてもボーナス額が減少したという話はよく聞きます。
転籍の場合は給料は下がる
出向の場合は給料は元の水準が維持されるケースが多いですが、転籍となると話は変わります。
転籍は出向先の企業と新しく雇用契約を締結するため給与もその会社の水準に合わせた金額になります。
転籍先の企業の方が給与水準は低い場合が多いので転籍すると基本的に給料は下がります。銀行との雇用契約は解消されていますので転職したのと同じ状況というわけです。
出向の期間はどのくらい?
出向の期間は銀行が出向規定で定めた期間となります。関連会社や取引先へ出向してスキルを学んで戻ってきて欲しいという場合は半年から3年間の間で定められているようです。
ただ、出向期間が決まっていたとしても銀行側は必要に応じて短縮したり延長することもできます。ですので、銀行に戻れるかどうかは銀行側の判断と言うことになります。
銀行員の出向先について経験者の事例を紹介!
メガバンクから20代で取引先へ出向した男性の事例
私は30代の男性で、大学では情報系を専攻しデータ分析やIT系の技術を学びました。大学を卒業してすぐ新卒でメガバンクに入行しました。
入行後は法人営業を担当後し、本部の企画系の部署で法人/個人のマーケティングやデータ分析業務に従事しました。
入行5年目から2年間程度、当行のシステムを開発しているシステム開発会社へ出向。出向先では主にデータ分析に関する技術を学びました。
銀行員時代の仕事内容
私は本部の企画系の部署で、マーケティングやデータ分析関連の業務に従事し、法人系の企画部署、個人向けの企画部署、リスク管理系の部署など、さまざまな本部部署と連携しながら、ニーズに即した分析案件やマーケティングのサポートを行っていました。
個人向け業務では、主に当行サービスをお客様により利用していただくためのキャンペーンの企画や、キャンペーンの効果測定のための分析、マーケティング用の顧客ターゲティングリストの作成などを中心に実施していました。
法人向けの業務でも基本的にはキャンペーンの企画サポートや効果測定などを行っていました。
リスク管理系の部署とは、企業や個人の与信判断に関する評価指標の検討などでデータ分析のスキルを活用しながら評価モデルの作成などを行っていました。
定量的なデータ分析のためのデータサイエンス力、及びAIモデル作成などに関わるプログラミングスキル、連携先部署の業務に関する知識もあったほうがいいのは間違い無いですが、相手部署の担当者と一緒に案件を進めるので、こちらに業務知識がなくてもなんとかなるシーンは多かったです。
出向先での仕事内容システム開発を担当しているシステム開発会社
私が出向したのは当行のシステム開発を担当しているシステム会社でした。出向した会社では2年程度勤務しました。給与は銀行員時代と変わりませんでした。
出向した会社でしていた仕事内容は以下の通りです。
- データ分析に関わる技術のリサーチ、習得
- システム開発会社として行っているデータ分析業務の推進
私がしていた仕事は統計解析や人工知能に関連する数学的な理解や、実装するためのプログラミングスキルの習得などです。
他にもシステム開発会社として行っているデータ分析業務の推進なども行っていました。
出向先では統計解析など数学的な基礎知識が必要とされました。プログラム実装力(言語的には主にはpythonかjavaでした)や英語力(場合によっては英語の論文を読むこともあるため)も必要でした。
出向して大変だったこと
周りは全員システム開発などを経験してきている人たちなので、そういった人たちの仕事についていくのはとても大変でした。
周りの人たちにとっては当然のことでも自分にとっては初見なことも多く、一々調べたり人に聞きながら作業を進めていたのは結構大変でした。
当時住んでいた場所は銀行には近かったものの出向先からは少し遠い場所だったため、通勤が大変になりました。
出向中にもたまに銀行側の仕事が降ってくることもあり、二刀流で仕事をすることもあり、なんかいいように使われてるなという印象を持ちました。
出向して良かったこと
自分のスキルを高められたことは良かったです。銀行にいるだけではたどり着けなかった地点までスキルを高められたました。
また、外の世界を見ることができ、自分の会社の良さや悪さを客観的に見ることができるいい機会でした。結果的にこの出向がきっかけで転職をしました。
メガバンクから50代で関連会社へ出向した男性の事例
私は現在51歳の男性です。大学卒業後、メガバンクに入行し主に法人営業を中心にに26年勤務しました。
その後、関連会社に出向になり半年で退職しました。所有していた中小企業診断士及び社会保険労務士の資格を活かし、現在はコンサルティング会社で経営コンサルタントを行なっています。
銀行員時代は東と西の拠点を跨ぐ転勤を何度も経験して、引っ越しを何度もしました。
銀行員時代の仕事内容
私は都内の法人営業部でマネージャー職を行なっていました。具体的には、取引先の企業に向けての融資・運用・事業承継・M&A・海外進出・販路拡大・組織開発などのニーズに対応して、適切なソリューションを提供する部署で、部下10名程度を抱えプレイングマネージャーをしていました。
仕事内容としては、お客さまである企業と直接面談などコンタクトする部分と内部管理の資料作りなどが半々ぐらいでした。
また、時間を作っては新しい顧客を開拓するような飛び込み営業・紹介営業なども行なっていました。
銀行の性質上、融資でのソリューション解決が基本とはなるのですが、近年は企業のニーズも多様化しているので、いろいろな部署と協力して、あるいは外部の税理士などどもチームを組んで動くことが多くなっていました。
ただ、問題解決の難易度が高い場合、解決した場合の顧客満足度も高くなるので、いただける対価も必然的に大きくなりそれなりにやりがいのある仕事だったと思います。
出向先での仕事内容
私の出向先は大手保険代理店で法人に対しての損害保険営業が私の仕事でした。出向先の組織は旧態依然としていて、銀行からの出向者が役員陣の大半を占めている会社でした。
古き良き昔の銀行時代のしきたりを頑なにプロパー社員も含め強要してくる体質でした。したがって、パワハラも横行していましたし、働き方改革も進んでいませんでした。
会社に来なくなる人も近いところで複数人いて、人事部にも言ったのですが全く聞き入れてもらえませんでした。
仕事内容は依然と変わらず法人営業でしたが、保険料をいかに安くするかどうかだけの問題解決が中心で、顧客に対してというよりも保険会社に対しての交渉が多く、あまり面白い仕事とは思えませんでした。
給与面については、銀行に在籍したままの出向だったのでさほど下がらなかったのですが、賞与の減額分は大きく、トータルで10%程度下がりました。
ただ、そのまま転籍すると大幅に下がることは確実だったので、早期退職優遇制度に応募し、以前より転職を考え取得していた資格を活かそうと考え、コンサルティング会社への転職を行い、また独立診断士としても一部活動しています。
銀行から出向する場合、大きくは取引先か関連会社に分かれます。私のように関連会社に出向した場合、上司は銀行の人とかのケースも多いです。
給与などの待遇面・仕事面など劣化して上下関係はそのままといった如何とも耐え難い状況に陥るケースが多いのではないかと思います。
私はそんな環境に耐えられずに出向して半年で退職しました。出向はメガバンクの宿命とも言えますので、若いうちから備えておくことをお勧めします。
最後に
出向はメガバンクで働くのであれば誰にでも起きうることです。出向の内示はいつされてもおかしくありません。
銀行員として充実した毎日を送っていたのに突然出向になり、出向先の仕事内容も人間関係もイマイチで転職をしたという話はよく聞きます。
若いうちから自分のスキルを磨いておき、何が起きても対応できるようにしておくのが理想です。少しでもスキルアップをして将来への備えをしておきましょう。
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